入浴剤を楽しく使うには
コラム
この章は、「入浴健康法」等入浴に関する著書が多数あり、入浴剤の効果的利用法などについて、テレビ・雑誌・講演会など精力的に活動され、入浴に造詣の深い 医学博士 植田理彦先生にご執筆いただきました。
植田 理彦 先生 略歴1927年東京に生まれる。
東京大学医学部卒。医学博士。
同大の内科物理医療法学教室(物療内科)で温泉医学を学び、認定温泉医の資格を持つ。日本交通公社東京診療所長、日本健康開発財団副会長、東京八重洲総合健診センター所長、アジュール竹芝総合センター所長を歴任後、現在 医療法人社団 六医会・インペリアルタワークリニック院長。
平成2年には、環境庁より温泉行政功労者の表彰を授与される。
1. 入浴剤の種類
自然の恩恵である温泉と薬用植物による薬湯に由来して、日本の入浴剤が創造されました。普及するにつれて温泉地に行かなくても、自然環境は別として家庭で楽しみながら温泉を味わう入浴ができるようになりました。
入浴剤の種類には、硫酸塩泉、炭酸泉、重曹泉、食塩泉など温泉の成分の中で、効能がある無機塩類を主体としたもの、菖蒲、ゆず、桃の葉など昔の人の知恵で使われていた薬用植物(有機質)を主体としたもの、また、それらを組み合わせたものなど多くの種類があります。製剤としては、これらの主体に酵素、油脂、界面活性剤、色、香りなどが加えられています。利用するにあたって人それぞれ、目的に応じて選び楽しむことができます。
2. 水道水浴(淡水浴)の不快感
水道水浴により皮膚の角質に水分が浸透し、逆に皮脂、自然保湿因子など、肌の潤いを保つ物質が皮膚から抜け出ていく現象が起こるといわれています。浴後10
分ぐらいまでは角質に水分は残りますが、その後この部分の水分も抜け出てしまうので肌はかさつきます。とくに高齢者や乾燥肌の人は水分保持能が低いので肌のかさつきは強くなります。
わが国の水道水は、ヨーロッパの水と違ってマグネシウム、カルシウムが少ないので、水自体が肌の潤いを保つ物質を溶かす作用が強いといわれています。
最近、水道原水の汚染が進行し水道水の水質が悪化してきているために、より多くの塩素の注入を余儀なくされています。したがって、水道水浴(淡水浴)により肌の荒れる人が少なくありません。また、沸かしたての湯は熱めで入ると、浸透圧の影響で肌がぴりつきます。とくに柔肌の人は不快感を覚えます。
3. 入浴剤の効用
1) 塩類を主体としたもの
成分は、硫酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カルシウム、塩化ナトリウムなどです。剤型の多くは粉末、顆粒です。
特徴としては保温効果が優れています。これは、水道水に溶け込む塩類の成分が、肌をくまなくコーティングして汗腺口をふさぎ、発汗を抑えて体温の放散を防ぐ結果です。浴後のぬくもりは水道水浴に比べて長く持続します。硫酸塩の作用は、皮膚の血液循環を活発にします。したがって、末梢血管抵抗が低下して血圧は下がります。また、心臓の心房から分泌される利尿ホルモンの産生を促す作用があることが報告されています。利尿ホルモンは、腎臓に働いて排尿を促進するので降圧の目的で使われます。したがって、この入浴剤により高血圧の改善が期待されます。
肌の潤いと張りを維持しているのは皮下のコラーゲン繊維です。この繊維の代謝が衰えると、肌が老化し、張りがなくなり皺が増えみずみずしさが失われます。
この入浴剤には新しいコラーゲンを産生する働きがあることも報告されています。また、カルシウムには止痒効果があります。
炭酸塩の作用は石鹸と同じように皮膚の脂肪や汗腺にある脂肪の不潔物を乳化して洗い流す洗浄効果があります。美肌効果といえましょう。
炭酸塩、コハク酸など有機酸類との組み合わせで、水道水のpHを調整して二酸化炭素(炭酸ガス)を発生する錠剤があります。この入浴剤の特徴も保温効果が優れています。作用は、水道水に溶け込んだ炭酸ガスが皮膚の組織に侵入して血管を拡張します。その結果皮膚の血流量が増加して新陳代謝が促進され、筋肉に溜まった疲労物質である乳酸などが排出されやすくなり、身体の疲れがとれ浴後も温もりが続きます。
このような塩類浴剤の作用によって、水道水の質を変え皮膚のあれを防いだり、皮膚の保湿、洗浄、血流量の増加によって皮膚の美容効果が得られます。そして保温効果が得られることによって、筋肉のこり、痛みなど緩和されたり、疲れの解消、入浴時の血圧の降下が得られます。
2) 薬用植物を主体としたもの
そもそも昔の人の知恵で、季節の折々に菖蒲湯、ユズ湯などなどで楽しむ入浴が行われていました。民間療法としても薬用植物が入浴剤として使われていましたが、明治中期には商品化され現在に至っています。
生薬をそのまま刻んだもの、生薬のエキスをとり出して酵素、油脂、界面活性剤などと組み合わせた多くの種類があります。原料としては、トウキ、センキュウ、チンピ、ウィキョウ、ニンジン、シャクヤク、ケイヒ、ハッカ葉、モモ葉などが用いられています。
これらの植物には精油が含まれ、浴湯に入れると精油によって肌がコーティングされ入浴後の温もりが続きます。また、その香りにより人によって鎮静効果が得られます。
生薬そのものにも皮膚の炎症を抑えたり、血流量を増加させたり、かゆみを抑える作用があります。
4. リラクセーション

現代はストレス社会といわれるように、仕事においても家庭生活でも日常生活で心理的緊張感の連続を伴います。それを解放させるのは弛緩、つまりリラクセーションです。
ストレスが蓄積されると、心因性の病気すなわち狭心症、心筋梗塞、高血圧、胃潰瘍、大腸過敏症、じんましんなど心臓・血管系、消化器系、運動器系、感覚器系などに心身症が発症してきます。
一日のストレス・疲労はその日のうちに解消するのが望まれます。その手段として最適なのが入浴です。入浴は身体を清潔にする目的だけではなく、新陳代謝の促進、保温などの効果にプラスしてリラクセーション効果があるのです。それは入浴温度が主役です。
リラクセーション効果がある温度は、心身を鎮静する副交感神経が優位となる39℃± 1℃の微温浴が適温です。
入浴剤の色・香りはさらにその効果を高めます。着色剤・香料には種々の配合がありますが、入浴の楽しみと効果を得るには自分の好みのものを選ぶ必要があります。カラーのバスタブですと色が合わない場合がありますし、香りも強すぎる場合があるからです。
5. スキンケア
入浴剤を水道水浴(淡水浴)に用いることで、保温、保湿、洗浄効果のあることは前に述べました。かゆみのある皮膚疾患には止痒効果がある塩類浴剤を用いると、かゆみが治まるので「掻く」刺激が除かれ症状は軽快してきます。また、がさがさした角質が洗い流され肌の血流が改善され、潤いを持った清浄な肌をとりもどします。


