入浴剤の歴史

日本は世界でも有数の温泉国であり、古くから人々は天然の温泉を利用して病気やけがの治療に、健康保持増進にと役立ててきました。又、同様の目的で薬用植物の利用が盛んに行われ、今日まで伝えられています。入浴剤の発生は、これら天然の温泉と薬用植物による薬湯に由来しているものです。

薬用植物を用いた薬湯は、端午の節句の菖蒲湯や、冬至の柚子湯のように古くから庶民のあいだに慣習として受け継がれ、江戸時代には治療を目的としたものがすでに処方化され、皮膚病の治療薬湯などに用いられました。

入浴剤としては、明治中期、種々の生薬を配合し、布袋に入れ煎出して用いる商品が作られたのが初めてです。
その後、種々の効果を持つ温泉(子宝の湯・腫れものの湯・中気の湯・美人の湯など)を温泉地に行かなくても、家庭で簡単に応用できないかという考え方から、当初は天然の温泉成分を乾燥、粉末化したものから始まり、昭和初期に無機塩類入浴剤(ノボピン・バスクリン等)が開発されて発売されました。これらは温泉を構成している成分のうち安全性が高く、効能効果を有し、品質が安定していて、原料としても確保しやすい基剤が選択されました。

さらに、入浴で得られるリラックス感を助長し、入浴を楽しくするために、色素や香料が添加されました。
戦前、風呂付の住宅を持っている家庭はまだ少なく、入浴剤は主に公衆浴場で使われていました。
1960年以降の高度成長期のおり、風呂付の公団住宅の建設が増え始め、自宅に風呂があることが一般化するようになってきました。1980年代になると炭酸ガス系の入浴剤が発売され、入浴剤市場が急速に拡大しました。さらに温泉ブームが起き多くの温泉系入浴剤も発売されました。近年では、保湿成分でスキンケアや美容効果を期待する商品も発売され、家庭で出来る手軽な健康法として日本人の生活に欠かせない存在になっています。
ストレスの多い現代社会では、入浴剤に疲労回復、肩こり、腰痛などの諸症状の緩和を求めるニーズに加え、気分転換や癒し・リラックス・香りや色・肌触りを楽しみながら入浴される方も増加しています。お風呂の効果をより高める入浴剤を上手に使って日々の健康維持に役立てられています。